雨上がりの虹



 京邸の階で、私は座り込んで頬づえをつきながら外を見ていた。


 外は雨が降っていた。
 大降りではなく、ただ静かに雨は降っていた。
 京に降る雨は、鎌倉にいた時と違って、音も無く深深と降る。
 そんな気がするのは、自分の気のせいだろうか。


 先程も、朔にそこだと涼しくて風邪をひくから、と部屋の中に入るように言われた。
 だけど私は、寒くなったら…、ともう少しこの場に留まる意思を伝えた。


 その後、ずっと雨が降っている庭先を見ている私に気付いた白龍がやってきた。


「神子、何をしているの?」


 ただぼんやりと外を見ているのを、不思議そうに白龍は訊ねた。


「いつ雨が止むのかなーって、思って」


 私はただ、のんびりと答えた。


「神子が望むなら、雨、止むよ」


 白龍は、私の役に立つなら、と嬉しそうに話した。
 だが、私はその白龍の申し出を断った。すると白龍は私の思ったとおり、悲しい顔をした。 


「私の力、足りないから、神子の望み、叶わない?」


 そう悩む白龍に、私は軽く微笑みながら言った。


「違うよ、白龍。ただね、雨が降るのを見ていたいの。もうすぐ、雨も止みそうだし、ね」


 空を見上げると、真っ黒な雨雲が少しずつ薄くなってきていた。
 納得すると白龍は、朔に呼ばれてこの場を去っていった。


 実際、私がここにいるのは、ただ雨を見るだけではなく、用事で出かけたあの人が帰ってくるのを待っているのだ。
 帰ってきたのが真っ先に分かる、この場所で。


 次第に雨が止み、雲の間から日が差してくると、見ていた方角の空に、虹がかかった。


「……」


 そしてその虹の下に、愛しいあの人が笑いながら私の名前を呼ぶ。


「お帰りなさい」


 私は満面の笑みで向かえた。



───雨上がりの虹は、愛しい人の笑顔を連れ立ってやってきた。



拍手用お礼SSでした。初の拍手お礼は、コルダの火原からの有難うメッセージだったので。
(まだ、拍手用お礼としておいてありますが)
遙か3、八葉×望美です。
敢えて、相手は誰かはぼかしてます。
お相手は、ご想像のままに。

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