水遊び
 日差しが強く、まだまだ日中は暑い日が続いている、そんなある日。
 星宿は、ぽっかりと空いてしまった時間を、身体を休める時間にしようと、暑さにも関わらず、気分を変える為に中庭に出ていた。
 外に出ても、そよとも風が吹かないので、暑さが紛れず、涼を求めて池へと向かう事にした。
 池に近づくと、どうやら水音が聞こえてきた。
 美朱が池で涼んでいるのかな、と思いながら、星宿は別段気にも止めずにいた。
 実際その場にいたのは、美朱ではなく柳宿だった。

「星宿様も、涼みにいらしたのですか」
 柳宿は服の裾を巻くって、池の中に立っていた。場所によっては浅い所もあるので、特に心配する必要もないのだが。
「こう、暑くては、な。やはり、水辺の方が涼しいだろうと思って来たのだが、どうやら先客がいたらしい」
「どうですか、池の中に入ってみては?水が冷たくて、気持ちいいですよ」
「いや、中に入らなくてもここで十分涼しいから、平気だよ」
 星宿は、水辺でのんびりとその光景を見ていた。

 どれくらいその風景を見ていただろうか。少し肌寒い風が流れてきた。水辺にいる事が随分暑さから逃れる事が出来たのだろう。このままここにいたら、逆に風邪をひいてしまうかもしれない、星宿はそう感じた。
「そろそろ、上がったらどうだ。風邪をひいてしまうぞ」
「そうですね。だいぶ涼しくなってきましたし」
 そう言うと柳宿は岸辺に向かって歩き始めた。
 もう後少しで、池から上がれる所まで来た時、足元の石が滑りやすかったのか、柳宿はバランスを崩した。
「きゃあ」
「危ない、柳宿」
 星宿は思わず、柳宿を助けに駆け寄った。結果、びしょ濡れとまではいかないが、星宿もある程度濡れてしまった。
「有難うございます、星宿様。おかげで転ばずに済みました」
「水場だからな、滑るのだろう。怪我が無くてよかった」
「陛下ー。そろそろ政務にお戻り下さいませー」
 宮殿の方から臣下の声が聞こえてきた。
「あ、すみません。長く引き止めてしまいましたね」
「いや、柳宿が気にすることはない。私も一人で涼むよりは楽しかった」
 そう言うと星宿は政務に戻っていった。服が濡れている事に臣下に小言を貰ったが、星宿はあまり気にも留めていなかった。

 翌日、星宿は風邪をひいて政務を休む羽目になってしまった。それを聞いて一人青ざめる柳宿の姿があったのは、いうまでもない。
                                                                《終わり》


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すみません、時期を外したネタになってしまいましたが、そしてかなりお待たせしてしまいました、1000HITキリリクでございます。踏んで下さった黒呂羅夜さま、有難うございました。ちゃんと星柳になっているでしょうか?ちょっとありきたりなネタかなとも思ったのですが、あまりに放っておくと、新刊のネタに使ってしまいそうなので(前例有)時期外れですが、ここにUPさせて戴きます。