遙かなる時空の中で2
──怪異、北山の氷室にあらはるる事──
配役(敬省略)
藤原幸鷹:中原茂
源 泉水:保志総一郎
和仁:浅川 悠
少納言:飛田展男
北山の天狗:神奈延年
虫麻呂(院の住む「泉殿」で使われる下人):岸尾大輔
犬麻呂(上に同じ):伊藤健太郎
院の護衛:私市 淳
泉水「気のせいだとよいのに」
幸鷹「泉水殿、如何為さいました?」
泉水「幸鷹殿。あの、先程から不穏な気配があるのを感じられたので。それも北山の方角からなのです」
幸鷹「北山の氷室に、今、院の遣いの者達が向かっていますが」
泉水「はい。ですから心配で。泰継殿も陰陽師のお仕事で、北山にはいらっしゃらないそうですし」
幸鷹「そうですか。ですが、ご心配なく。私の部下達も護衛につきましたので」
泉水「検非違使の方々も? なら夏越しの祓(なごしのはらえ)は、無事に行われているのですね」
幸鷹「皆、一足早く北山の氷に触れる事が出来ると、張り切っておりました」
泉水「夏越しの祓は、いえ、院から下さる氷を待ちわびているのは、皆同じなのですね」
幸鷹「そのようですね」
泉水「あ…?」
幸鷹「何か?」
泉水「いえ、あの、氷を神子にお届けしてはどうかと思いまして」
幸鷹「それは良い考えですね。暑さにまいられていたようですから、きっと喜ばれますね」
泉水「はい」
少納言「お、お願いでございます。院にお目通りを」(お爺さん口調で)
院の護衛「ここは、院の御座所ですよ。場所をお間違えではありませんか?」(麻呂調に(笑)
少納言「ああああ、いえ、私は院に折り入ってお願いしたい事がありまして…。じ、実は、私の母が…」
院の護衛「しつこいですな」
幸鷹「おや?」
泉水「あ、あの方は、少納言殿」
院の護衛「なりません」
少納言「あれー」
院の護衛「帝の覚え高き方をお取次ぎする訳には参りません」
少納言「どうしても、いけませんか?」
院の護衛「どーーしてもです。お引取りを」
泉水「あの、少納言殿。如何されたのですか」
少納言「泉水殿。いえ、何でもありません」
幸鷹「そうは言っても、何か事情があるんではないのですか?あなたの母上が何とかと、申されていましたが…」
泉水「あの、もし何か出来る事があれば?」
少納言「いえ、お二人にご迷惑をお掛けする訳にはまいりません。失礼します」
キサ、飛田さん退場。しかも飛田さんを追いやるように。
幸鷹「あの方は、帝よりの貴族ですから。院側の私たちには話しにくいのですね」
泉水「どうして京は、院だ、帝だと背きあわなければならないのでしょうか」
幸鷹「貴族に限らず、京に暮らす者たちも院側と帝側に分かれて暮らしていますから、治安も悪化するばかりです。私は検非違使の長として、もっと何とかしなければ」
泉水「いえ、幸鷹殿始め、検非違使の方々のお陰で大事に至らずに済んでいるのだと思いますよ。私などでは、自分の無力さを思い知るばかりです」
浅川さん登場。
和仁「だからいつも叔母上、お前の母君が言っておるのだ。泉水、お前は取るに足らない存在なのだからな」
泉水「和仁様」
和仁「漸く身にしみてわかったようだな。お前如きが院や帝のお心を思いやるなど、思い上がりもいい所だ。はっ」
幸鷹「宮様。お一人で出歩かれてるんですか?後見人の時朝殿は?」
和仁「うるさい。私がどこへ行こうとお前達には関係ない。ふっ、夏越しの祓は明日か」
泉水「はい」
和仁「くだらないな。氷の欠片一つで大喜びするなんて、下々の者達のする事だ。私は楽しみになどしていない。(強調するように)かき氷を食べたいなどとは少しも思っていないぞ」
幸鷹&泉水「…は?」
和仁「いいな。時朝に作ってもらったカキ氷を二人で食べて、『口についてるよ』 『あ、頭がきーんとしたよ』 なんてしたいなんて、思っていないからな。これっぽっちだって思っていないんだからな」
浅川さん、退場。
幸鷹「妄想の塊ですね。
『あの人の言う事なんて、気にする事ありませんよ』(少し高めの声で)」
泉水「え?」
幸鷹「神子殿ならきっとそう仰るんでしょうね」
泉水「そうかもしれませんね」
幸鷹「それでは私はこれで。神子殿にお会いしてこようかと思いまして」
泉水「どうか神子によろしくお伝えください。あ、ですが…」
幸鷹「承知しておりますよ。氷を差し上げる事は、内密に、ですね」
泉水「はい、有難う御座います」
幸鷹「では」
中原さん退場。
セミの声と鐘の音。
泉水「東寺の鐘の音。日も沈む頃合だというのに、北山に向かった者達はまだ戻らぬのでしょうか。
ああ、禍々しい気配が。北山の方角から、一体何が…。
やはり、これは呪詛の気配。この先には氷室があるのに。下人達は皆、無事なのでしょうか」
翼が羽ばたく音。延年登場。
泉水「ああ…」
天狗「待たれよ。お主、八葉か?」
泉水「て、天狗!?」
天狗「このような時刻に、北山へ何のようだ?」
泉水「私は呪詛の気配を辿ってまいりました。これは全て、あなたの仕業なのですか?」
天狗「何だと?龍神の神子に免じて大人しくしてやってるというのに、悪さをしているのはわしらではない。人間だ!」
泉水「えっ、人間!?」
天狗「八葉の癖にそんな事もわからぬのか」
泉水「ではこの呪詛の気配は?」
天狗「知らん。わしはただこの地を騒がす者どもを追い払う為に参ったのだ」
泉水「騒がす者?」
天狗「聞こえぬか?あの声が?」
虫麻呂「た、助けてくれー!」
犬麻呂「ここから出してくれい。早く出してくれー。寒いよう」
虫麻呂「俺、虫麻呂、お腹空いたよー」
犬麻呂「虫麻呂ー」
虫麻呂「眠い」
犬麻呂「寝るな、虫麻呂。寝たらおしまいだぞ」
泉水「これは、助けを求めている。行かなければ」
天狗「わしも行こう。うるさくて敵わぬのでな」
犬麻呂「あ、泉水様、た、助けて下さーーいー」
虫麻呂「俺、虫麻呂。あぁー、て、天狗ー!?」
犬麻呂「ほ、本物か!?」
虫麻呂「本物? お、お助けー」
天狗「こやつらか、先程から騒いでいる者は」
泉水「何故、何故皆、氷室の中に閉じ込められているのです。検非違使達までも」
泉水、近寄るが何かに弾かれる。(音)
泉水「これは、結界? 一体誰がこのような事を。えい(叩く。弾かれる音)。やあ(再度叩くが弾かれる音)。とう(また叩くが、バチっという音)、あ、痛」
飛田さん登場。
少納言「何をしている(低めの声、京都風訛り調で。以降しばらく低い声)」
泉水「少納言殿? 何故あなたがここにおられるのです?」
少納言「愚問やな。氷室の氷を全て我が物にする為や」
泉水「あぁ?」
少納言「そもそも、この北山の氷室を何故(なにゆえ)院が独占している。京の夏は暑い。とにかく暑い。ひたすら伊藤健太郎。それなのに、貴重な氷をただ一人院が独り占めしてしまうなど、何と、何と羨ますぃー」
天狗「確かに羨ましいな(ぼそっと)」
少納言「羨ましぃーい」
泉水「院は独占しようなどとは、思っておられません。現に氷は明日、家臣全員に分け与えられるのですよ」
少納言「家臣全員? そう、院に従う者のみな。帝側の我々には氷のこれっぽっちも、一欠片も回ってこぬわ!」
泉水「そんな?」
少納言「お前達も私の邪魔をするつもりか。この氷はやらぬぞ」(刀を振り上げる仕草)
泉水「お待ちください。どうか、刀を収めて下さい」
少納言「そうはいかぬ。母上は私が、この私が氷を持ち帰るのを心待ちにしておるのだ」
泉水「あなたの母君? どういうことですか?」
少納言「うるさい、うるさいー!」
天狗「慣れぬ刀を振り回して、自分を切らねばよいがな」
泉水「少納言殿。お止め下さい」
天狗「どうやら何者かに操られているらしい。聞こえぬだろうさ」
泉水「え?」
少納言「氷は、私のものぉー!!」
刀を弾く音。中原さん登場。
泉水「あ?」
少納言「くっ」
幸鷹「そこまでです、少納言殿」
泉水「幸鷹殿?」
少納言「おのれ!」
幸鷹「もうおやめなさい」
少納言「う、うぬ?」
幸鷹「このようなばかげた事は、あなたの本意では無い筈ですよ。天狗殿によるとあなたは操られているだけだ。そうですね、和仁様」
浅川さん、登場。
和仁「フン、さすがは検非違使別当か」
泉水「宮? あなたがこのような事を?」
和仁「そうだ、だがもう遅い。それ」
結界が解かれる音。
虫麻呂「やん、ひょっこり、虫麻呂。やった、出られる」
犬麻呂「あぁー、逃げろー」
虫麻呂「走れ、走れー」
犬麻呂「慌てて転ぶなよー」
ダイサク、転ぶ。
犬麻呂「転ぶなよー」
泉水「転ぶなよー(笑)」(可愛く)
和仁「もはや、結界は必要ない。氷室の氷は全て穢れた」
泉水「氷を穢した!?ではこの氷を手にした者は全て?」
天狗「全て穢れを受ける」
幸鷹「無論、院にも穢れが及びます。それを承知の上での事ですか?」
泉水「もしや、その穢れを自らの力で払われるおつもりですか?」
和仁「ほーう。泉水のくせ(強調)によくわかったな。その通りだ。院の穢れを払ってこう申し上げるのだ。『東宮に相応しいのは、この私だ』と」
幸鷹「そう思い通りに行くとお思いになのですか?」
和仁「何だと?」
幸鷹「さあ、泉水殿。ここに小瓶があります。この瓶を」
泉水「はい。これは…? 神子? 神子の力を感じます」
天狗「ほーう。神子の気を受けた霊水か」
幸鷹「その通りです」
泉水「神子、あなたのお力をお借り致します」
和仁「な、何をするつもりだ」
泉水「どうかこの地を呪いし邪なる気を、払いたまえ。えーい」
SE
天狗「ほーう。キレイサッパリ呪詛が消えるのう」
和仁「泉水のくせに」
泉水「くせに…」
和仁「私の術を払ったというのか」
泉水「はい」
(会場、(苦笑))
和仁「くっ、だがお前達のように下賎な者に私の大いなる野望はまだまだくじけはせぬ。神子め、覚えてろ(最後、可愛く)」
(会場、「可愛ーい」)
幸鷹「ふうー」
延年、笛(下に付いてるのを上げ下げすると音色が変わるやつ)を吹く。
少納言「(我に返って。声の調子も最初に戻る)あ…、ここは? 私は一体?」
泉水「お気づきになられましたか、少納言殿。ここは北山の氷室です」
少納言「なんと、何時の間に」
幸鷹「操られていた間の記憶はないようですね」
泉水「少納言殿、母上がどうとか仰られていましたが」
少納言「はぁ。じ、実は母はこの暑さにまいってしまい、床に伏せっているのです」
幸鷹「なるほど。それで氷を分けて欲しいと院に頼みにいらしたのですね」
少納言「はい」
泉水「では、急ぎましょう。母君がお待ちなのでしょう。この氷をお持ち下さい」
少納言「宜しいのですか?」
幸鷹「この暑さですから、少しくらい氷が減っていても、不思議はありませんね」
少納言「あ、有難う御座います」
天狗「うむ。ではわしの力で氷を都まで運んでやろう」
泉水「天狗殿」
天狗「この地の穢れと騒がしき者どもを払ってくれたお礼にな」
泉水「有難う御座います」
天狗「では、いくぞ」
犬麻呂「虫麻呂?」
虫麻呂「氷だぞ、氷が現れたん」
犬麻呂「ほ、本物? 本物だー。あれ、でも俺達が運んでくる筈だったのに」
虫麻呂「ヒャッホー。これで明日はかき氷が食べられる。いいかき氷だらけ」
犬麻呂「ばか、早く院にお知らせしないと」
虫麻呂「はっ」
犬麻呂「慌てて転ぶなよ」
ダイサク、転ぶ
犬麻呂「だから、転ぶなって」
ダイサク、再度転ぶ。
天狗「これでよし。では、わしは帰る」
泉水「あ、有難う御座いました」
天狗「慌てて転ぶなよ」
幸鷹「多少予定の刻限を過ぎましたけれど、天狗殿のお陰で無事氷を奉納できましたね」
泉水「ええ。明日はこの氷を神子にお届けしましょう。日頃の疲れを癒し、この暑い夏を恙無く越えられますようにと願いを込めて。でも今は感謝しなければ。龍神の神子」
幸鷹「私も祈りましょう。神子殿の行く末が幸せに満ちておられますように」
終
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遊びに遊び捲くっていたような気がする、遙か2のドラマ。
浅川さんが結構遊んでた?
「時朝に作ってもらったかき氷」、とか、「泉水のくせに」、とか。
ああ、でもやっぱり一番遊んだのは、犬麻呂、虫麻呂やってたイトケンとダイサクか(笑)