調理実習の結果


今日の5時間目の授業は、家庭科。
 


 それも調理実習の日。



 普通に食事が実習内容なら、お昼休みの時間から開始するのだが今日の内容は、お菓子作り。なので少し早めに来て、実習室でお弁当を広げている生徒もいる。
 かくいう私も、その中の一人だったりする。
 毎日毎日お弁当を用意してくれるのはお母さんではない。
 

───お隣りの幼馴染の譲君。


 幼馴染、だったんだけど時空を越えた世界から戻ってきた私達は、ただの幼馴染ではない。


 幼馴染で、


……恋人の、譲君。


 時空を越えて、私は譲くんへの想いに気がついた。
 譲君は、私が想いに気がつくよりももっとずっと前からそう、私が譲君を「お隣りの幼馴染の譲君」としか認識していなかった頃から私の事をいっぱいいっぱい想ってくれていたのだ。
 その想いに答えたい。
 でも、時空を越えて改めて思い知らされた。
 

 料理どころか、家事全般的に苦手だった事に。


 現代に戻ってきてからは、恥ずかしいながらにも料理は譲君に教わっている。
 それに対して、譲君はその事自体が嬉しいのかいつも嬉しそうな顔をしている。
 今日の実習では、取っておく事が出来るクッキーなのでようやく譲君の手伝い無しで作った物を、食べてもらう事が出来る。
 放課後に下駄箱で譲君を待っていると、委員会で遅くなったのか、慌てて走ってくる姿が目に入った。
 そういえば、調理実習の後片付けをしていた時に、譲君が入っている委員会の生徒を呼び出す放送が聞こえてきてたっけ。
 同じ実習班にいた友達が、慌てて片付けを終わらせようとしていたから大丈夫だからって、一緒の班の子と代わってあげたしね。


「お待たせしてしまって、すみません。先輩」


「委員会の仕事、お疲れ様。あのね…」


 私は歩きながら、調理実習で作ったクッキーを譲君の前に出した。


「実習で作ったんだけど、料理上手な譲君にあげるって、結構覚悟がいるんだよね」
「覚悟だなんて、そんな、春日先輩」
「やっぱりあげるの、よそうかな」
「せ、先輩!?」
「先輩って呼ぶのやめないと、このクッキーあげない」


 私は、一度譲君の前に出したクッキーの包みを、再度自分の鞄の中に仕舞おうとした。


「ええーっ!」
「名前で呼んでくれないと、駄目」


 私は軽くウインクすると、譲君の言葉を待った。


「……」
「聞こえないよ、譲君」



「の、望美……先輩」


 漸く告げた譲君の言葉を聞いて、私は思わず顔を真っ赤にした。
 そうしたら、目の前の譲君の顔も、私に負けない位顔を赤くしていた。


「ふふ、恥ずかしいね」
「もう少し、待ってもらえますか。俺、必ず呼べるようになりますから」
「待ってるね、譲君。それから、はい、ご褒美」


 私は仕舞いかけていたクッキーを、今度はちゃんと譲君に手渡した。


「有難うございます」
「譲君のみたいに、美味しくないよ」
「先輩が作るものなら、何でも美味しいですから大丈夫です」
「何か、ちょっと引っかかる言い方だけど、まあいっか」


 私達は少しずつ、それでも確実に前へ進んで行くだろう。幼馴染から恋人へのステップって、簡単なようで難しい事なのかもしれないのだから。





 おかしいなあ。後輩属性、弟属性でも、譲君には落ちてない筈だったんですが(苦笑)
 何かふと思いついたのが、実習で作ったお菓子を彼氏にあげるってパターン。
 現代バージョンなら、誰でもよかったんですが何となく料理上手な譲君が真っ先に頭に浮かんでました。  きちんと譲v望美になってるんですかね。それとも望美v譲なんでしょうか。
 お読み戴き有難うございました。

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