夜更け

 その日は、深夜から一段と冷え込んでいた。しかも昨日は雨が降っていたので、余計に寒く感じた。部屋の中とはいえ、外よりはだいぶ寒さは和らぐが、現代で慣れ親しんだ生活ではないので、あかねにとって、初めて過ごす京の冬は、今まで経験したよりも寒い冬になった。

「っくしゅん」
 寝ていて余りの寒さに、あかねはくしゃみをした。
「あかね殿、寒いのですか?」
 あかねのくしゃみに気付いて、横に寝ていた頼久が声をかける。
「流石に冷えるね」
 苦笑いしながら、あかねは答える。答えながらも、あかねは寒さに少し震えていた。
「只今、掛ける物を持って参ります」
 頼久はそう言うと、すぐに出て行った。
「頼久さんって、本当にまめだよなあ」
 そう言いながら、あかねの顔はほんのり赤くなっている。
「あれ、雨止んだのかな?」
 あかねはふと、寝る前には聞こえていた雨の音が止んでいるのに気がついた。わざわざ寒い思いをして確認しに行くのも、少し躊躇われたが、なんとなく外が見たくなって、寒いのもお構いなしに廂に出て格子を上げた。

「あかね殿?」
 被る物と温石を持って戻った頼久は、帳台にあかねがいない事に気付いた。
「頼久さん、こっち」
 頼久が自分を探しているのに気付いたあかねは、廂から頼久を呼んだ。
「あかね殿。そんな所にいらっしゃいましたら、お風邪をひかれます」
 頼久はとりあえず、持って来た衣をあかねにかけてやった。
「有難う、頼久さん。でもね、ほら見て」
 あかねは嬉しそうに格子の外を指差した。頼久がその言葉に合わせて外を見てみると、庭は一面真っ白だった。昨日から降り続いていた雨が、この冷え込みで雪に変わっていたのだ。
「小さい時から、雪を見るとなんかはしゃいじゃってね」
 あかねは照れくさそうに話した。楽しそうに話しているあかねを見て、頼久はにっこりと微笑んだ。

「っくしゅん」
 また一つあかねはくしゃみをした。あかねの話に思わず聞き入ってしまった事に気付いた頼久は、すぐに格子を下ろした。そして「すみません」と一言謝ると、あかねを抱え上げた。急な事であかねはびっくりしたが、顔を赤らめたまま頼久の体にしがみついた。
「明日朝、またお話して下さい。この様子ですと、明日の朝になっても雪は止みそうもありませんので」
 そうして、二人は床に戻っていった。
 明日、頼久にどんな話をしようかと考えながら、あかねは眠りについた。頼久は、あかねが寒くないように抱きしめたまま浅い眠りについた。起きてからどんな話が聞けるのか、楽しみにしながら…。
終わり
先日の初雪で思いついた作品
なんか私って頼久創作は勢いで書いている気が(^_^;)
季節柄のネタが頭に浮かぶと、あかねちゃんの横には頼久だったりする訳で
書けなかったXmasネタも、そういや頼久vあかねだったなあ
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